和田 實先生について
和田 實先生は明治の終わりから、幼児教育は『感化誘導』でしなさいって。
感化誘導法。
「感化」というのは、大人がお手本示しながら、自然に側でしていれば、子どもは感化される。
自然にそれはああいうふうにやるのかな、って気がついて、真似していく。
あとは「誘導」。
子どものやっていることをちょっとだけ援助して、サポートして、
こういう力をつけたいという教育の目標があるでしょう、
その目標の方に子どもが進んでいけるように、ちょっとだけ「誘導」する 。
誘導ってのは「誘い導く」でしょ。
だから和田實先生は「決して指示命令しなさんな」って。
そういう教育をしちゃいけないって。
そこ(和田實学園 東京教育専門学校)に私は長いこと勤めたのでね。
その和田實先生の考えが大好きだったもんだから、ずっとそこにいたんですけど 。
叱るのをやめると、子どもの主体性が育っていくのですか?
そうです。
だって自分のしてることを否定されないから。
「これでいいんだ」って思えるでしょ。
「これやっていいんだ」って思うでしょ。
やって危ないこととか、やって困ることは、ちょっと先生がサポートして 、
そっちじゃない方向にちょっと動くとか、
「ここだとちょっと危ないからで、こっちでやって みようか ?」
とかそういう言い方すれば、
「こっちやっちゃ、危ないでしょ!」
だと終わっちゃうけど 、
「こっちの方がいいかもしれないね 」とか
やっていいことを用意したら、そっちの方に行けるでしょ。
それが誘導なのね。
大人としたら 、すぐ答えを用意しちゃうとか、やりがちですよね。
だから子どもの生きる力 、 伸びていく力をちゃんと尊重して
それを大人が後押ししていく。押さなくていいのだけど。
あとからついていく。そういう考え方ですね 。
考えさせることで、子どもの考える力が育つということですね。
そうです。
さっきの目薬の件(その2)も、
お父さん達はもうしょうがない、嫌だって言ってるのだからって諦めたでしょう。
諦めたんだけど、それは子どもの「嫌だっ」ていう気持ちを受け止めたからなのね。
安心したんですよ、子どもはね。
受け止められて、それで、いつでもできるように目薬を目の前に用意したと思うんですよ。
それが子どもにとって『できると思ったから』っていう、
凄い子どもの決断を導き出したわけですよね。
だからもっと子どもを信じて。
子どものできる力を信じて。
大事にして。
子どもにも大人のように接することが、大事なように聞こえるのですが?
そうですよ、同じですよ、大人同士の関係と。
奥さんに「あれやるな」「これやるな」とか、
あなたも「何その靴下の履き方!」とか言われたら嫌でしょ 。
「なにその靴の履き方、何それかかと踏んづけて」とか。
例えばそういうことされてたら。
確かにそうですね 、傷つきますね、嫌です。
嫌でしょう。そんな些細なことでも。
毎日子どもはそれ言われているんですよ。
それを毎日言われ続けた子どもに、どういう感情が育つかということですよね?
感情というか、自信がなくなるよ。
何やってもお母さんに叱られてばっかりいて。
子どもが喜ぶことを、いっぱいしてください。
大人もそうですよね。嬉しいことをやりたいですよね。
嬉しいことをやって。仕事ばっかじゃないよね。
毎日叱られ続けてたら、この上司のもとで仕事したくないなって、思ってきますよね、同じじゃないですか。
そうですよ。逃げ出したくなるね。
子どもはこの家出て行けないもんね 。自分の家ですから。
もうどんどん萎縮しちゃうか、
あるいはその反対に暴力的になって、人に命令したり指示したり、
命令通りならないとピシャッてやったり(叩いたり)ね。
そういう感情の子になってしまうね。